HOME > あゝ思い出ごはん > 滑稽俳句王! 俳句で綴る「思い出ごはん」
誰の胸にもある忘れられない食事の思い出。
一つの料理とともに人生の大切な場面が蘇る。
あなたの思い出の一品と物語はなんですか?
2007年12月10日 16:39 | まぜまぜごはん
「俳句の本来は俳諧、滑稽(こっけい)にあり」。☆メシより好きな俳句
若いころ、FM音楽番組の人気ディスクジョッキーだった八木さんは、元々ウィットと風刺の効いたおしゃべりが得意。「俳句王国」の番組を担当してすぐ「三月の甘納豆のうふふふふ」の句で知られる俳人坪内稔典さんに勧められて俳句を始めた。
なつかしのお味噌が届く年の暮(おお、みそか)
かき氷どの部分からくずさうか
野原大学音楽学部草笛奏法研究生
○△□に灯りキャンプ場
冗句満載の句集は初句集『ふふふ』(本阿弥書店)以来、今年の『怠けぐせ』(同)まで7年連続7冊目。『八木健のすらすら俳句術』(岳陽舎)などエッセイ集も多数ある。これらの著作物は、実は、伝統俳句の本道を踏まえた内容も多く「八木流話術にゆめゆめかどわかされてはならぬ」とは俳人仲間の評である。
静岡出身ながら2度の務めの俳句王国・愛媛が気に入って、住みついたが、東京、横浜などへの出張教室で全国を駆け巡っている。自称俳句中毒、俳句依存症。「メシより好きな俳句」にどっぷり浸かった充実人生。以下は我がごはん亭特別講演の抱腹絶倒「美味しい俳句自分史」である。

(八木さんの似顔絵)
中学生の頃、手相を見てもらったことがありましてね。「君は料理人か話す商売がいい」と言われたことがあった。結局、話すほうを選んでNHKのアナウンサーになった。が、今でも料理には関心がある。
小学四年生のとき祖父に連れられて静岡の田舎から東京に遊びに行った。寿司屋に入って、目の前で格好よく握ってくれるのに感激した。それからほどなく正月になった。二つ年長の兄と客をもてなすために家にカウンターらしきものを整え寿司屋を開いた。ねじり鉢巻をして年賀の客に「お客さんなにを握りましょう」なんてやったのだ。得意だった。
今では静岡から一時間ちょっとで行けるが当時はSLで一日がかりで行った。東京は今の感覚でアメリカほど遠い存在で握り寿司は「凄い文化」だったのだ。
沢庵や蒟蒻などを寿司ネタに
昭和36年にNHKに入社して最初の赴任地が富山だった。当時はワンルームマンションなんてなかったから間借りだった。和田助産院の二階に下宿した。下宿のおばさんが助産婦で旦那さんは家庭薬配置の仕事だった。下宿人だから和田家の食卓で家族とともに食事させてもらった。旦那さんは料理が巧みだった。家庭薬配置の仕事で長期間各地に滞在して自炊をして腕を磨いたらしい。
太平洋側に育った私は初めて日本海の魚介を食べることができた。バイ貝の煮付け 甘エビの刺身 カワハギの刺身や煮つけ 蛍烏賊も初体験だった。下宿のおばさん和田せつさんは絵が好きで、私とウマが合った。食事しながらふたりで絵を描いたものだった。
甘エビの鬚ながながと描かれたる
NHKの俳句王国を担当したのがきったけで、私は定年退職後本格的に俳句をつくるようになり、最近では 豪華客船「にっぽん丸」の船内俳句講師をした。船内での食事は豪華なものである。二ヶ月三ヶ月の航海で、メニューは一度として同じものは出ない。行く先々の海で獲れた海産物もテーブルに載る。
いちばん愕いたのは「トド」の肉だった。「なにごとも体験」という気持で大きなひと切れを皿に載せてもらった。これが不味い。焦げ茶色でみた目もよくないが、硬くて味も焼きすぎたビーフのようだった。テーブルで相席となったご老人が「カラスの肉みたいだ」とポツリ。私は相槌を打った。
太平洋戦争の末期。カラスを食べたものだった。五歳ぐらいの頃の記憶で臭くて「マズイ」のひとことに尽きる。ご老人とハナシに花が咲いたのは言うまでもない。
ゲテモノよトドのつまりの珍味とは
「にっぽん丸」の航海ではさまざまなイベントやオプションのツァーがあり、船内講師も参加できることになっている。アラスカでキングサーモンを釣る企画を勧められて参加した。
キングサーモンの釣れるポイントへ2トンぐらいの漁船で行く。日本製の魚群探知機でサーモンの所在を確かめて太い竿を繰り出す。突然の猛烈な引き。船主でアメリカ人の漁師の若者が何か猛烈な勢いで怒っている。糸を緩めてサーモンを泳がせて弱らせてから引き上げろということらしい。船べりで私は必死にリールを巻いたり緩めたりした。しかし、サーモンは1メートルぐらいはあるから強い力で私は引き込まれそうになるのを必死で堪えた。アメリカ人は軽々リールを巻いている。私は貧弱な体格を恥じてコンプレックスの塊となってしまった。釣れたサーモンを食う意欲すら失くしてしまった。
ジャパニーズ引き込むキングサーモンの馬鹿力(写真下)

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