
昭和の子どもは「高いところ」が好きだった
デパートの屋上、各種タワー、高層ビルの展望台……
特に1960~70年代の高度成長期の子どもたちは
「高いところ=楽しい」という確固たる確信をもっていたのである
今も残る昭和の「高いところ」から、あの時代を、あのころの街並みを
そしてあのころの僕たちを、もう一度眺めてみよう
文=初見健一
1970年代、渋谷区民が「デパートに行く」と言う時、世代によるヒエラルキーのようなものがあった。祖父母世代の場合は「銀座に行く」を意味し、両親の世代は渋谷東急東横店、そして当時、若者世代に属していた僕の叔母さん世代の多くはシブヤ西武。土日になるとこの叔母さんについて歩いていた僕は、当然、もの心がついたころからシブヤ西武に親しむことになった。
オープン当初からオシャレでクールなイメージのシブヤ西武だが、かつてはここにも屋上遊園地があった。園児時代の記憶に生々しく残っているのは、お城の形をした巨大なからくり時計だ。時間になるとズラリと並んだ「兵隊さん」たちがいっせいにラッパを吹き鳴らし、お城のバルコニーにお姫様と王子様が登場する。
この夢のような光景は、僕にとってはデパートというものの最初の印象になっているだけでなく、渋谷という街の原風景のようなものとして今も心に刻まれている。
